たびするなら、たびたび失礼致します。
 ある作家のたびの旅苞。


作品紹介~これまでに制作した作品の紹介と説明

  作品の制作と資料やモチーフについて


  2016~2020年に制作した作品


制作に関係する着想や意図、経緯、創意工夫、技法、
制作に使った資料と、
下絵(エスキース)等についての紹介と説明
資料やモチーフにした地域、風景、モデル等の
紹介と説明、制作でのエピソード
タイトル:垂涎の山月と鳴子峡
着想については合板に有るゲル状のリンシードオイルの
固まりが、この作品を造る大きな要因になった。
このゲルが月の光として光沢のある輝きを持てば
良かったのだが、なかなか上手くいかなかった。
厳密にいうとこのゲルは絵具ではなく、顔料の接着剤等
としての樹脂入りのオイルの固まりで、そういった
ゲルとその周りの風景画との対比と、月としてのゲルが
幾らか持つ象徴性や神秘的な感じが良い風に風景画と
合わさればと思っていた。
ゲルの垂れた感じは偶然そうなったが、技法的に言えば
ドリッピングになるのかも。
絵を描いた合板の下地が赤色なのが、作者としては
珍しく特徴的。
合板と組合わせたF10号のパネルの彩色には手間が
かかった、絵に合う色がなかなか見つからず水彩絵具を
重ねて塗って造った。
宮城県の鳴子温泉にある鳴子峡をモチーフにしたが、
私が旅行で泊まったのは中山平温泉。
左の記事に有るゲルに合う風景を、過去に撮った写真で
探していたら鳴子峡の感じと合うと思い、イメージを
固めていった。

旅行した時は夏の終わりで雨がよく降っていた。
歩いて観光する人やハイキングをする人が殆どなく、
鄙びた感じを味わった。
「日本の自然を描く展」の展示で、仙台市にある
せんだいメディアテークでの巡回展を観るためという
のもあり、ついでに訪れた。その時展示された絵の
タイトルは「九十九里浜のスケッチと構成」。

この地域を描いた絵はF10号でもう一枚ある。
電車の乗り換えで鳴子温泉駅に着いたのが夜だったので、
その時の感じが印象的だった事を描いた作品。


タイトル:承接模索
余り良い着想では無いが、ゴミの分別が当時住んでいた
地域であり、紙類分別の紙類を取って置いていた。
特別に注目していた分けではないけれど、紙でできた
製品の箱の材質やデザインに依っては何か制作に使える
のではないかと思った事があった。
材質やデザインは商品の高級さや流通の広さ、その地域
特産物、作られた年代で様々で、見ていて綺麗と思える
物もある。
実際は生活の中でよく買うものが多くなるので、食べ
物や生活必需品の紙類が多くなり、なぜか制作に使用
する機会も多くなった。

装飾を活かした絵を余り描いた事がなく、そういった
デザイン感覚や知識が乏しいので、嫌厭していた。
制作を続けて資料を集めてみるものの、制作する作品に
そういった要素が少ない。
風景や植物の絵を描いていると、いい景色や近現代、
古い建物等の景観をモチーフに、気候や季節等が
影響した情景になり、描いていて悪い気分では無いが、
上記にある今まで何となく感じてきた未発と言うか
未進と言うかそういった部分を造ってみたいと思った。
当然装飾やデザインが浮かばないので、道具や
コラージュの技法に助けてもらって仕上げた。

資料となった写真を見て構図とデザインやコラージュ
される材料の取合せを決めて、試作無しで制作した。
墨汁を使用したが、紙の材質に依っては弾いて描けな
かったり、基底材の水彩紙に直接描いた下絵に
コラージュの形を合わせるのに手間が掛かったりした。
装飾的な線や色の部分が強くなり、描写の入る部分を
活かせるかについても考える事になった。
山形県酒田市にあるNKエージェントビルと自転車を
景観に描いた作品。
NKエージェントビルは映画「おくりびと」で撮影に
使用された建物。
海向寺という寺から下り坂を行くとこのビルに突き
当たり、その景観を写真で撮った。個人的には好みで
あったものの地味に思え、撮った画像をそのまま使う
のか考える事となった。携帯電話のカメラを使用した
ので画像が荒かったが、資料として十分使えた。

モチーフにした場所付近には日和山公園や日枝神社が
ある。自転車はレンタサイクルで、マリーン5清水屋と
いう百貨店で借りて、酒田港や庄内砂丘のある
海岸線沿い等を探索していた。私がサイクリングした
のは飽海郡遊佐町の比子の辺りまでだったように
思えるが、記憶が確かでない。風力発電用の風車と
思われる物が何基かあったのを見た記憶がある。

庄内砂丘は安部公房の小説「砂の女」の着想の場に
なったらしい。

コラージュのデザインを考えていて、このビルの
上にある空をティッシュの紙箱であるピンクの
水玉模様で、自転車をカレーの紙箱である赤と金色の
柄に出来たのがちょっとした楽しみだった。


タイトル:播種育生 往昔の蓮種
東北を絵の題材探し等の旅行をしていて、その時撮影
した写真から選んで描くモチーフを決めた。
撮った写真の中で大きな葉の植物があり、「蓮?」と
思って調べた所、中尊寺蓮という古代の蓮だった。
図書館に行き中尊寺についての図書を調べると、この
蓮についての話が多く出てきた。中尊寺にある植物な
だけあって、描くのが躊躇われる位の話があり、私が
描いてもいいのだろうかとそれなりに結構思えた。
それでも完成出来たのは、撮れた写真が良かったから
だと思う。

アクリル絵具で下絵を描いて、その上に油彩で仕上げ
まで描いた。
この絵の制作では、アクリル絵具を使って描く事と、
油彩の溶き油を日頃使って無い物を使用して描く事を
計画していた。
黄変しない溶き油を探して描いた絵で、光沢と艶が
増していつもの絵と幾らか感じが変わった気がする。

黄変を無くして描いてみて思ったのは、黄変を余り
気にしなくていいと思える様になった事で、リンシード
オイル等大半の溶き油に色が薄くあり、メディウムにも
色が薄くある。絵具に混ぜると色が薄く変わる訳で
当然で、余り気にしないで有る物で最良の色を作る
事が、自分にはいいと思えた。

今まで“色が幾らか変わる”と思いながら使っていた
という、その気持ちを変えていかないととそれなりに
思えた。
検討や疑問を解決する事が今後も付き纏っていくので、時々に解消出来ればと思う。

今後は艶や光沢について調べていけたらと思う。
平泉の地域にある遺跡や自然風景を取材して、いい
題材を探していた。
取材する場所が多くて、ガイドやパンフレットにある
全ての観光場所を回ることは出来なかったが、気楽に
散策していた。
蓮を撮影した頃は夕方になりかけていたと思う。
蓮の花が咲いていたり、日が差している頃を撮影して
いたら感じが違っていたと思うが、描くだけの題材が
見つかって良かった。

特に目当てにしていた訳では無かったが、訪ねた時期に
中尊寺では、秘仏「一字金輪佛頂尊」が開帳されて
いたので拝ませてもらった。それと、天台寺という
瀬戸内寂聴師が住職をしていた寺の本尊である、
聖観音立像も拝む事が出来た。
平泉の地域はとても謂れと仏教の歴史がある所で、
その辺至る所にそういった話しがあるので、不心得者が
ばれない様に行儀良くしなくてはと、この記事を書いて
いて改めて思えた。



タイトル:蝙蝠
落書きの様な絵になってしまったが、「生息地」と
同じく水彩絵具とアクリル絵具、アルキド樹脂絵具を
用途に合わせて描く事を考え、ドローイングしていった。
色の模様や絵具の質感が出来ていくのだが、具体的に
何を描こうか考えながら筆を動かしていると、仕上がった
作品の様な蝙蝠の形になっていた。
水彩画の本紙に、色紙に色鉛筆で着彩した裏紙を取付けて
完成させた。蝙蝠がモチーフなので裏紙の色をどうし
ようかと決めかねたりもした。
新型コロナウィルス感染症が流行してしまったので、
蝙蝠についての世間でのイメージは良くないと思うが、
昔は夕方になるとそこら辺を飛んでいた。
制作当時はそんな感染症が流行るなんて思ってもいない
世の中で、地味な動物を描いてしまったとか、展示して
くれる所が無いなと思っていた。
その生態が分からないので図鑑で調べて、どの様な
動物か一応は知ったつもりでいたけども、幾つかの
感染症の原因になっていたり、疑われている事は載って
いなかったので、その事を流行後に知って気持ちが
動揺し、身が固まってしまった。
図鑑を詠んだ時は哺乳類で唯一飛べる存在とか、
超音波を使って夜でも飛行できるとかいう所に好感を
持っていたが、今では支持すると世間から不味い事に
なるなと思う2020年6月だった。
日本の蝙蝠事情はどうなんだろうか。


タイトル:生息地の情景 ドローイング
紙にドローイングした後、暫く放って置いて有って、
気になり見る度にどうしようかな、何かイメージが
湧いてこないかなと思う状態だった。
先にドローイングがあったのでその描かれた状態に
具体的なイメージを考え、加えて仕上げようと思った。
その後、以前田沢湖を訪れた記憶や写真を思い出し、
ドローイングから受けた私のイメージを助ける役割に
なった。(実際、他人がこの絵を見た時にはそういった
場所を感じる事は少ないと思う)
ただの風景と大きく違うのは刷毛で描いた黒い物体が
ある事。
仕上げた絵では空から水面に降りてくる生物になって
いるが、見る人に依っては黒い太い線にしか見えない
かもしれない。

画材の特徴としては水彩紙に描いたというのと、
透明水彩の役割をアルキド樹脂絵具を使って描いた事。
放って置いてあった時は水張りしておらず、イメージが
具体的になってからパネルに張った。
秋田県の田沢湖へは一人旅だったけれども、東北巡りの
数日かけての旅行計画で、なかなか過密でハイだった。
なので湖を遊覧船から見ていると落ち着いた気分になり、
穏やかで割と明るい記憶がある。湖の色と森林や黄金の
像(伝説の美少女たつこ姫のブロンズ像)の記憶や
印象が残っている。過密な旅行計画が長い記憶の流れ
として、或る1つの場所の感想だけでない感覚をダブら
せるのだろうか。
変わった仕上がりになったが絵に出来て良かった。

本制作した作品と造り方が似ている作品があり、
過去に「月のアート展」という公募展に出品した作品で、
タイトルは「三兎」と「寂寥の黄弧」になる。


タイトル:ぬめる灰色の雲際
アクリル塗料が余っていたので、板にドローイングして
出来た色やマチエールに、鍬形を構成した絵を合わせた。
灰色の背景を納得いくまで描いたり塗ったり、鍬形の
上にも樹脂を描いたり塗ったりして仕上げた。
当初予定していたものは絵具の盛上げを少なめにして、
マチエールに個性を持たせようとは思っていなかった。
けれども、「生息地」を描いた影響が出て来て今の
状態の絵になったと思える。
鍬形が描かれている薄い板に、その絵に合う色を塗った
裏板を張付けて完成させた。
アクリル塗料のドローイングからこの絵の雰囲気が
生まれた。
絵のイメージは死後の世界というか、違う世界を行く
感じを描いた。
上段の鍬形の背景が上手く仕上がらず、何度も手を
入れた。その手を加えていく行為が広がって、上段の
鍬形は盛上げがあり、それとの比較として下段の鍬形は
大体平面的な仕上がりになった。



タイトル:臆病な恋   8年間
メディウム(リクイン)を使って仕上げまで描き上げる
制作方法は、この絵を描く前にも数枚の絵で使っている。
「初夏」という30号の絵を描いた時、制作に随分と
時間が掛かったと思っていたけれど、本作品にはそれを
遥かに上回る時間が掛かってしまった。

着想は何を描こうかと資料や写真を見ていて、いいと
思える植物の写真が数枚あったので、その写真に合う
形象を思い浮かべて下絵を描いた。その下絵と植物を
構成して完成図を造った。(形象は予め男女の人物を
漠然と考えていた)
人物の形象はモデルになる人が無く、線描で描いた
下絵の感じを活かせればと思いながら描いた。
男女の絵になるが、この絵を他の人がどう思うか感想を
聞いてみたい。

この絵は5コマに分かれているが、最初に画面全体を
描いて、絵に向かって上段右の躑躅、上段左の、下段の
舩腹草、両端の人物を仕上げ、最後に全体を見直して、
加筆修正して完成させた。
制作期間が8年位掛かったので、仕上げた順に絵の
感じが違うと思う。それぞれで、その時々の私の描ける
ものの状態が示されていると思う。
力を入れた花の絵と形象から造った人物の絵の相性や、
花の写実性に人物の描写が追付けるかというのも時間が
掛かる事になった要因だった。
絵の上段にある白い花は奈良県で撮影した躑躅。その
隣の花は箱根で撮影した、下段の花も箱根で撮影した
舩腹草。
箱根には絵の題材探しも兼ねて、観光で訪れていた。
その時に撮影した写真を選んでモチーフにした。

奈良県で撮影した躑躅は祖母の家近くにあったもの。
よく晴れた日で結構そこら辺を歩いて風景等を撮った。

その日は祖母の葬式で親戚一同が来ていたが、散策して
写真を撮ったのは取材するという感じでは無く、
亡くなった事と葬式を記録するというはっきりした感じ
でも無かった。
祖母の過ごしていた地域を歩いてその日の風景や感じを
撮影しようと思った。撮った数枚の写真の中で躑躅を
写したものがあり、よく撮れていたのでこの絵に
使用した。
「初夏」という絵のモチーフに使った草花も、この時に
撮影したものである。

完成に8年掛かったが、他の絵も制作しての断続しな
がらの制作になった。公募展に出品する前年の春頃には
完成していたので、実際は制作に7年位で発表するのに
8年掛かったという事になる。


タイトル:黒鬼灯 蘭(シンビジウム) 日々草 薔薇 大輪金糸梅
兵庫県神戸市で行われている「花の絵コンクール」に
向けて制作している。
コンクールの題材が花をテーマにしたものなので、花を
描いていて、簡単な感じの絵で薄い色彩の絵や墨汁を
使った無彩色に近い絵がある。
写真を余り使わず、色鉛筆や水彩絵具でスケッチした
下絵を使ったり、実物をモチーフにしたりして制作した。
身近な植物を見つけて幾つかスケッチした中から選んで、構図を考えて制作した事もある。
黒鬼灯、蘭、日々草は買って来たもの。
薔薇は静岡県富士市の広見公園に咲いていたものを
モチーフにした。(薔薇は2度書いている)
富士市では市民の花に薔薇を制定しているとか。
大輪金糸梅は祖母の家で。

昔は花や植物に気を掛けなかったが、風景を描く様に
なってから、段々と立ち止まり見る事が増えた。
それと、20代前半に静物画のモチーフに造花をよく
描いていた事が思い出される。世間でも絵の題材として
花や植物が多く描かれているが、若い時から気に入って
いたのかもしれない。


タイトル:公園にある藤の木
出品する公募展の要項ではスケッチ画が募集されていて、
ずるけないで描きました。写真で撮った風景を資料に
するかどうかだったけれど、そういう制作法から浮遊
しかけていたのもありました。
他にスケッチを描く機会があるのかというと、「花の絵
コンクール」用や風景画を描くため位で、殆ど資料は
写真が多いです。
2015年位から不要な紙等に奔放に無造作にドロー
イングし、それらから何かイメージが湧いてこないか
という、先に何か描きたいモチーフが無い状態で描画を
していました。
仕上がりそうもない、拙い描画を思い出すのと、外出して
スケッチする事の準備や制作の計画、天気を気にしたり
他の人や周りを気にしたりするのとを、回想すると
随分ひたる物が違いました。
特徴は色紙を使った所、実家にあった画板を持ち出して
描いていました。
何処にでもある様な公園。
仕上がったスケッチ画は遠くまで空と雲と陸が続く
様だが、本当は遊具があってフェンスがあって
アスファルトと住宅があります。車も。
本スケッチを下絵にして、油彩で制作しようかと
思いつつ、自分で描いたスケッチ画を越える事が
出来るのか、焼増しになるかも等を考えると腰が
重くなります。